2024年9月29日(日)TKPガーデンシティ渋谷にて、「妊娠・出産・産後のメンタルヘルス支援シンポジウム」を開催しました。
参加申し込みは延べ120名となり、助産師、看護師、クリニックの方、大学関係の方、一般の方、民間支援者の方、様々な方が参加してくださり、関心の高さが伺えました。
イベントテーマ・登壇者
・基調講演:テーマ「信州大学・長野県での取り組み事例と問題提起」
登壇者:
信州大学医学部 周産期のこころの医学講座 講師 村上寛先生
・パネルディスカッション:テーマ「支援の輪を繋ぐために必要なことは何か」
登壇者:
東京都助産師会 理事・助産師 赤山美智代様
東京大学多様性包摂共創センター DEI共創推進戦略室 准教授 中野円佳先生
日本赤十字社医療センター 第二産婦人科部長
日本周産期メンタルヘルス学会理事 笠井靖代先生
イベント代表塚越奈央、famitasu共同主宰・社会福祉士 かなでなお
モデレーター 吉野ユリ子
「錯綜」「完璧な母親」「スティグマ」
ーイベント代表塚越からの目線設定・問題提起
産後うつを減らし、苦しい子育てをゼロにしたい。
私は「なぜすぐ産後うつとわからなかったのだろう」という経験をしました。
そしてそんな「取りこぼしてる人」が他にもたくさんいると思っています。
どうすれば、そんなことが起きないか。
本当に必要な人に必要な支援やケアが届けられるか。
「もうこんな思いする人いなくていい」そのような思いでこのシンポジウムを立ち上げました。
運営メンバーは、子育て経験があったり、精神疾患の経験があるメンバーがほとんどです。
痛みや苦しみがわかっている上で、もうこれ以上あの思いをさせたくない、と賛同してくれています。
シンポジウムの目線合わせとして、まず、現状の課題を整理しました。
<現状>
・コロナ禍で産後うつ罹患率が増加。10人に1人→2021年には約3人に1人※の割合に。
※引用元:公立大学法人神奈川県立保健福祉大学(2022年4月発表)
・産後ママの死亡要因一位は「自殺」
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2018/09/story/special_180914
・核家族・ワンオペ世帯が多く「援助者」は夫だけ。夫も「どこに相談すればいいか分からない。」
これらの根本的な原因は?
その根本的な原因として以下があると考えています。
- サポートする側の連携が取れていない/情報と担い手が錯綜
- 我慢するのが当たり前の空気/「完璧な母親」症候群
- メンタルヘルスケアが一般的ではない状況/スティグマ
これらを解決するために、今回のシンポジウムでは
- 支援の担い手がつながる輪をつくる
- 女性の置かれている環境を把握する
- 日本におけるメンタルヘルスの状況を把握する
この3点を目標に先生方にご登壇いただきました。
娘(次世代)が出産・産後に安心できる社会にする。
私個人としてはこのビジョンを持って、活動しています。
娘が大人になって、出産を選択する時、私が近くにいれたとしても、根本原因が払拭できなければ、同じようなことが起こってしまうかもしれない。
とにかくそれを終わらせたい。そう考えています。
「切れ目のない支援」を目指して活動する医師・村上先生からの
問題提起と改善案
今回、基調講演に信州大学医学部にて「周産期のこころの医学講座」講師をされている村上寛先生にご登壇いただきました。
産後うつにおいての3大リスクとして
【社会的支援の不足】【精神疾患の既往】【死産の既往などの精神的に大きな負荷のかかるライフイベント】がある上で、周産期のメンタルヘルスケアにおいて「切れ目」がなぜ発生してしまうのか、そしてなぜ長野県内での「周産期のこころの医学講座」を開催するに至ったかも踏まえてお話いただきました。
「切れ目」には、行政のチェックシートの「切れ目」、時間軸における「切れ目」の大きく2つがあり、それらを払拭するためにアセスメント方法の見直しと、ポピュレーションアプローチが重要とお話くださいました。
女性の置かれている状況と支援の輪の両方を見える化する
2部は、パネリストを招いて「支援の輪を広げるために何が必要か」を議論しました。
<パネリスト>
東京都助産師会 理事・助産師
赤山 美智代氏
東京大学多様性包摂共創センター DEI共創推進戦略室 准教授
中野 円佳先生
日本赤十字社医療センター 第二産婦人科部長
日本周産期メンタルヘルス学会理事
笠井 靖代先生
本シンポジウム代表・株式会社ママクオリア
塚越 奈央
famitasu共宰・講師・社会福祉士
かなで なお
<モデレーター>
ライフスタイルジャーナリスト
吉野 ユリ子
まずは課題設定として、実行委員会で実施したアンケートの結果を提示。
アンケート結果から、産後、うつ症状を実感したり、家族に心配されたりするケースは多いが、行政が用意する産後ケア施設や支援センターなどの利用は少ないことがわかっています。
ここが伸びれば(利用が増えれば)産後うつ率を減らすことができるのでしょうか。
次に、当事者として、famitasu共宰であり、精神疾患当事者でもあるかなでなおから課題提起をしました。
かなでなおから主に話題としてあげたのは、育休世代と言われる世代の産後うつには、他の世代とは違う配慮が必要だということです。自身の産後うつの経験を踏まえ、”頼りたいのに頼るのが上手にできない世代”(=”育休世代”)には従来のプル型支援では十分ではないのではないか?と問題提起をしました。つまり、行政で従来行われている、申し込み手続きありきの支援では、産後うつ当事者も手が出にくいということです。
これに関しては育休世代という言葉の生みの親である、中野先生が詳細に解説を交え意見交換を促してくださり、パネルディスカッションの後半は産後うつ当事者が置かれる環境の整備に関して意見交換がなされました。
今回のシンポジウムでは即時に、産後うつ解決のための具体的な策を出さなければいけない、というよりも、産後うつの課題感や問題意識を共有し、関係機関の横の連携を高めることを目標として掲げておりました。
村上先生の基調講演に加え、パネルディスカッションでの意見交換の内容共に、上記の目標は達成できたのでは?という手応えを得られる会にできたと感じました。
『なぜ共働きも専業もしんどいのかー主婦がいないと回らない構造』(PHP研究所)でも紹介されている、専業主婦前提社会の循環構造の図を用いて、現代の女性がどんな板挟みになっているのか解説していただきました。
続いて、支援者側として、東京都助産師会理事赤山さんから訪問看護ステーションの現場から見た母児家庭への支援課題をお話いただきました。
支援につながる窓口は、行政・医療・民間で多くあり、それぞれがリスクの度合いや内容によって対応しており、その中で訪問看護を通して一人一人に寄り添っているお話をいただきました。
その中の課題として、医師から訪問看護が必要としてつながるパターンと、本人が希望するパターンもあるが、そこにも現れてこないグレーゾーンの母親とどうつながるか、そして、訪問看護はどうしても1歳6ヶ月の時点で終了してしまうので、終了後の継続的な支援をどうしていくのかが目下の課題とのことでした。
最後のパネリストからの課題提示は日本赤十字社医療センター 第二産婦人科部長 笠井先生からいただきました。
笠井先生は、医療の現場から、出産の高齢化や周りに乳児がいない社会になってきていることで、精神的負担も広がっているお話をしてくださいました。
まずは母親が孤立しないこと、そして男性育休の目標値設定によって、育児スキルを身につけずに仕事ですでに消耗している父親がさらに負担を抱える形になってしまい、父親も産後うつ・育児うつになるケースはこれからさらに拡大するのではというお話もいただきました。
最後に、育児を担う父親も母親も自分自身の心身の健康が不可欠であり、ワークライフバランスの見直し、そして育児はパートナー同士の協働作業であることを再認識することとコメントいただきました。
今回オンラインも含めて質問ボックスを設け、参加者と一緒にディスカッションの時間としました。
解決策としてこれから提言していくこと
まずは政策提言、自治体ベースでの制度改革
そして目の前の必要な方を取りこぼさないための横連携
これを目指して会議体を設立し、支援者の方々、当事者の方々と議論し、
下記の対応を行政に提言して参ります。
・支援側の連携強化
・産後ケアが必要な人の判断軸と利用の緩和・促進
・家庭の中に問題を閉じずに社会で取り組む姿勢
・産前からの夫婦サポート・心身のチェック
・対面する職員・ケア側のメンタルヘルス知識・対応教育
体制のイメージは以下の通り。
自治体内・医療機関内だけでは担えない部分を、民間や個人が担っていくことで、社会全体が子育てに関わっていき、孤立と精神疾患に追い詰められる親を減らすことができると考えています。
今後について
定期的な意見交換会を開催します!(リアルとオンライン交互を想定)
イベント情報サイトPeatixにて、改めてご案内を出しますので、そちらにてお申し込みください。すでに1回目にご参加くださった方は、お申し込み時のアドレスにご案内をお送りします。
ぜひ次回もご参加ください。
政策提言第一弾を11月までに実施!
まずは渋谷区および東京都への政策提言を行います。
その後も定期的な意見交換会を開催し、より良い周産期の支援と子育て環境の提供を目指します。
こちらのサイトでも適宜情報更新していきます。
会議体にご参加だけでなく、拡散いただいたり、話題にしていただくだけでも大変ありがたいです。
今後ともよろしくお願いいたします。
<お知らせ>
村上先生のご著書『さよなら、産後うつ』もぜひよろしくお願いします!
売上は子育て支援に使用されるとのことです。
協賛企業様紹介
マキシマイザー株式会社様
https://logical.maximizer.co.jp/
MamaFinder様
https://mama-finder.com/
南尾 優香様
https://twinkle-star-0301.com/
BRIDGE Language Association様
https://www.bridge-language-association.com/
株式会社AndMe
https://kobayashishiori.studio.site/
マミット様
https://momit.jp/