2020年4月に緊急事態宣言が発出されて以降、テレワークの普及が一気に広がりました。しかしながら、感染症法の位置づけにおいて新型コロナウィルス感染症が2類から5類へ変更になり、テレワークの利用率は低下してきています。
テレワークという働き方が定着してきた中、仕事と子育ての両立をしていく上でどのような働き方が理想的か?
ご家庭で考えてみるチャンスかもしれません。
筆者は社会保険労務士、両立支援コーディネーターの資格を持ち、テレワーク、オフィス勤務の両方を経験しながら子育てをしています。
統計から分かるテレワークの現状、メリット、デメリット、そして育児介護休業法に定める「子の看護休暇」について解説をさせていただきます。
現状を知ろう!在宅勤務が減って出勤者が増加中?
「あれ、最近オフィスに出勤する人が増えてない?」「今はアクリル板が無いから、余計に密集してるように感じるね…」と社員が話している光景を見かけることが増えてきました。
2023年5月8日以降、感染症法の位置づけにおいて新型コロナウィルス感染症が2類から5類へ変更になり、オフィス内でもこのような変化が見られています。
2類から5類への変更後、感染対策としては、マスク着用が個人の選択・判断に変わり、飲食店ではアクリル板が取り外されるなど生活に変化がみられるのは、みなさんもご存知の通りです。
2020年4月に緊急事態宣言が発出されて以降、働き方にも大きな変化が起き、テレワークの普及が一気に広がりました。
そこから3年6カ月が経過し、働き方の形態がどのように変わってきたのか、まずは最新の統計を参考にみていきたいと思います。
コロナ禍でテレワーク需要増加、2類→5類になってからの変化は?
2023年8月7日、公益財団法人日本生産性本部より、企業などでテレワークを行う実施率が調査開始(2020年5月)以来、過去最低(15.5%)になったことが公表されました。
【テレワーク実施率】
・2020年5月:31.5%
・2023年7月:15.5%
上記の通り、約3年間で半分程度まで減少しオフィス勤務への回帰が起きています。
一方で「今後もテレワークを行いたいか」という質問については「そう思う(42.9%)」、「どちらかといえばそう思う(43.5%)」という結果になり、合計「86.4%」がテレワークの働き方を希望しています。
今後、テレワークとオフィス勤務が両立する働き方が続くことが想定されますが、子育て中のママ、パパにとってどのような働き方が理想的なのでしょうか。
テレワーク、オフィス勤務とどちらの働き方も経験している筆者が「子育て」という視点でのメリット、デメリットについて解説をさせていただきたいと思います。
テレワークとは?まずは定義を確認
最初にテレワークの定義を確認しましょう。
「テレワークとは、情報通信技術(ICT=Information&Communication Technology)を活用した、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」のことを指します。
テレワークの区分は「在宅勤務」「サテライトオフィス勤務」「モバイル勤務」の3種類がありますが、今回の記事では「在宅勤務」について深堀りをしていきたいと思います。
テレワークで働く主なメリットとして「通勤がない」「電話や話し声、雑談が無いので業務に集中できる」などが挙げられます。
また、デメリットとしては「仕事とプライベートの時間が分けづらい……」「コミュニケーション方法が限定される」など、メリットの裏返しとなる課題があります。
次の章から、テレワークのメリットとデメリットについて具体例を挙げながら確認していきます。
メリットを享受し、デメリットを解決するにはどのような方法があるのかみていきましょう。
テレワークのメリット5選
それでは、テレワークのメリットを5つご説明させていただきます。
- 通勤時間を別な活動時間に充てられる
(例)子どもの送迎、家事、余裕があれば朝活 - 病気やケガなど、子どもの急なお迎えに対応しやすい
(例)急な発熱、ケガ、お友達とのトラブル - 業務のスキマ時間でちょっとした家事・育児ができる
(例)雨が降ってきた時に、洗濯物を取り込む - 仕事に集中できる(子どもが家にいない時間帯限定)
(例)電話対応が無い、急に声を掛けられない - 家族が病気の時、看病をしながら仕事ができる
(例)元気だが登園許可証が出るまでの自宅療養の期間
在宅で働くことのメリット5選をご紹介させていただきました。
何かあった時に、すぐにママ、パパが迎えに来てくれるのは子どもにとっては安心ですね。
テレワークのデメリット5選
メリットの裏返しが、そのままデメリットになっているケースが多いです。
解決策も合わせてご参照ください。
① 「家にいるんだから、家事と育児もできるでしょ」と思われている
(例)配偶者が子どもの急なお迎えに行ってくれない
(例)配偶者が仕事から帰ってきても家事、育児を手伝ってくれない
(例)PTAで係をやらされる
(例)プライベートの「一人だけの時間」が取りづらい
(例)テレワークを経験したことがない人に「楽をしている」と誤解されている
《解決策》
周囲の理解不足や誤解により、不快な思いをするのは嫌ですね。
突発的で急を要する業務依頼があったり、残業があったりと仕事場所以外はオフィス出勤と変わりません。逆にテレワークだからこそ生産性を求められる仕事も多いとも言われています。
誤解が生じないように、少なくとも夫婦間ではテレワークの現実を共有し、話し合うことが大切です。
② 気持ちの切り替えが難しい
(例)仕事とプライベートの環境が変わらないので、リフレッシュができない
《解決策》
一例として「出勤時と同じように準備をする」「服を着替える」「デスク周りに仕事と関係ないものは置かない」、など自分で仕事用のスイッチを「オン」にする環境を整えることで集中しやすくなります。
③ コミュニケーションが限定される、コミュニケーション不足によりメンタル不調を発症する例も
- ③は子育て限定の話ではなく、テレワークという働き方の問題点になります。
(例)チャットコミュニケーション(文字コミュニケーション)が多くなり、表現力によっては言いたいことが正確に伝えられない。また、誤った伝わり方をすることもある。
《解決策》
ビデオ通話で直接話を確認をすることで、正確にニュアンスまで伝わるようにする。
(例)マニュアルや指示を正確に理解できずに、誤った解釈や作業をしてしまう。
《解決策》
レクチャー後に、画面共有でのモニタリングが有効。
(例)「業務指示を正確に理解できておらず、会社に迷惑をかけているかもしれない……」「評価をされていないかも……」と不安になり、メンタル不調に。「出勤させて欲しい」と申し出をするケースもある。
《解決策》
上司が部下の業務理解度の把握をして、困りごとに気を配るようにする。定期的な面談での聞き取りも有効です。必要に応じてオフィスで対面の面談も行う配慮も必要。
(例)仕事の習熟度が上がりづらい、質問がしづらい
(例)「ちょっと、教えて」がしづらい。
(例)他の同僚がどのように仕事を進めているか分からない
《解決策》
テーマを絞って短時間の研修を行う。グループで発言が難しい場合(特に新人)には、個別での研修を行うなど配慮が必要。
④ 子どもが家にいる時間は、仕事に集中できない
(例)声を掛けられて仕事が中断、子どもが何をしているか心配……、子どもは悪くないと頭では分かっているものの、イライラしてしまい仕事に集中ができない。
《解決策》
仕事に集中するためには、保育サービスの利用と家族のサポートが重要になります。
特に、お子様が乳幼児期の場合は目が離せないため、仕事をしながらの育児は困難さがあります。
内閣府は「就業に集中できる環境の整備や、テレワークの健康管理など利用の際の課題にも留意することが重要」とされ、「就業時間中は保育サービス等を利用して業務に集中できる環境が整備されていることが必要」としています。
⑤ 家族が病気の場合、看病をしながら仕事ができる
(例)「仕事を休んでもいいけど、会社に迷惑を掛けるし……」「仕事を少しでも進めておきたい」などの理由で、家族の看病をしながら無理をして仕事を行うケースがあります。
《解決策》
一見メリットのように見えますが、家族の看病をしながらの仕事は負担が大きいです。
そこで「子の看護休暇」の取得について、ご説明をさせていただきます。
「子の看護休暇」とは子どもの看護が必要な時に取得できる休暇のことです。育児介護休業法で、仕事と育児を両立するための権利と位置づけられています。正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員などさまざまな雇用形態の方が取得することが可能です(「日雇い労働」や「1週間の労働日数が2日以下」など、対象外になる方もいらっしゃいます)。休みの理由は、病気やケガだけではなく予防接種や健康診査等の病院への付き添いも含まれ、子ども一人につき年間で5日間までとなっています(対象の子どもは「小学校就学前の子」)。
2021年からは時間単位での利用も可能になっています。
尚、有給・無給かは事業者が決められることになっておりますので、各企業の人事部門へご確認をお願いします。
まとめ
テレワークの利用率は大企業を中心に減少傾向にあります。ニューノーマルの働き方の一つとして定着してきたテレワークも転換期を迎えている状況です。
2020年5月の緊急事態宣言発出後、急激な働き方の変更で混乱が見られた職場も多かったと思います。
今後「同様のケースが起こるかもしれない」ということを念頭に、各家庭でシミュレーションをしておくとトラブルを防げるかもしれませんね。
テレワークはママ、パパの働いている姿を見せる良い機会ともいえます。
「へぇ、ママは会社でこんなことやってるんだ」「会議中はこんな話し方をするんだ」「あ、パパ、謝ってる(笑)」など、普段の家庭では見られない、別な一面を知る機会かもしれません。
私事で恐縮ですが、私と妻は二人ともテレワークをしていた時期が2年ほどありました。
妻からは「子育てをするのに、一人じゃないと思えることが安心」と言われたことがあります。子どもが病気になった時の言葉でした。
働き方の選択肢が増えた中、夫婦がお互いの働き方を理解しながら、子どもと向き合える時間を作れるようになれるといいですね。
本記事が「子育て中のママ、パパにとっての理想的な働き方は何か」ということを検討するヒントになりましたら幸いです。