あなたは、日常生活の中で怒りの感情をおさえられなくなったことはありませんか?
かといって、怒りの感情を完全におさえこんだら、あなたが苦しい思いをするかもしれません。
怒りの感情を適切に扱い、適切に伝えられたら良いのに……と思うこともたびたびあるのではないでしょうか?
今回は、最近子育てや教育現場でも話題になっている「アンガーマネジメント」についてお話しします。
アンガーマネジメントについて
まず、「アンガーマネジメント」とはどんなものなのか、詳しくご説明します。
アンガーマネジメントとは
アンガーマネジメントは、「怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング」として1970年代にアメリカで生まれました。
もともとは犯罪者の更生プログラムとして使われていましたが、だんだん企業や教育現場、子育て中の親への研修としても使われるようになりました。
アンガーは「怒り」で、マネジメントは「管理する」という意味です。
このトレーニングを使って、怒りを上手にコントロールし、伝えるべき怒りは適切に伝えていく方法を学んでいきます。
アンガーマネジメントのメリット
アンガーマネジメントの方法が身につくことによって、いくつかのメリットがあります。
1. 感情がコントロールできるようになる
親が感情をコントロールできるようになると、子どもに対して不必要なレベルの怒りをぶつけることがなくなります。
親が激しい怒りを子どもにぶつけると、子どもも傷つきますし、親自身も自己嫌悪におちいります。
その怒りが行き過ぎると、虐待になってしまったり、子どもがこころを開いてくれなくなるおそれもあります。
親が感情をコントロールできるようになると、子どもも日々安心して過ごすことができるようになります。
2. 考え方が柔軟になる
怒りの背後に何があるのか、親自身が気付けるようになると、子どもへの理解が深まります。
なぜ子どもが泣いているのか、なぜ子どもが反抗しているのかなど、子どもの困った行動に対して、「うちの子はきっとこんなふうに考えて行動しているんだ」と、親側の思考の幅も広がります。
3. 怒りによるストレス、エネルギーの消耗が少なくなる
怒りという感情にはそれ相応のエネルギーが必要です。それも、どちらかというと負のエネルギーです。
激しい怒りを爆発させずに、冷静に怒りを伝えることができれば、親自身のストレスが減り、心身ともに消耗せずにいられます。
アンガーマネジメントで対処すべき怒り
1. 持続してしまう怒り
いつまでも忘れられない怒り、または、忘れてもきっかけがあれば何度でも思い出してしまう怒り、いつまでも根に持ってしまって相手を許せない怒り、などがあります。
自分の中でなかなか怒りが消化できず、怒りが「恨み」のようになってしまっています。
2. 激しい怒り
怒りだすと歯止めがきかなくなり、相手に対して激しく怒鳴り声を浴びせてしまうことがあります。
3. 頻繁な怒り
精神的に不安定で、しょっちゅう相手に怒りを爆発させてしまいます。相手は「この人は怒ってばかりの人」と認識してしまいます。
本人はイライラしてばかりいるので、体力を消耗してしまいます。
4. 相手やものに向かう怒り
怒りが攻撃性となって現れてしまいます。外に向かえば暴力や暴言になってしまい、自分に向かえば自傷行為になってしまいます。または、ものを相手に投げたり、もの自体にあたることもあります。
「怒り」とは何か?
ここまで「アンガーマネジメント」についてお話ししました。
次は、これからあなたが扱おうとしている「怒り」の正体について、細かく見ていきましょう。
「怒り」の定義
「怒り」を表す日本語はたくさんあります。
たとえば、「腹が立つ」「イライラする」「カッとなる」「ムカつく」「憤る(いきどおる)」など。
このようにさまざまな表現のしかたがある「怒り」ですが、共通しているのは、人間の原始的な感情であり、赤ちゃんのときから表現される感情なのです。
目標を達成できないとき、自分の思い通りにならないとき、自分が他人に傷つけられたときなどに「怒り」は起こります。
「怒り」の背景にあるもの
あなたは、自分が怒っているとき、「なぜ自分は怒っているのだろう?」と考えたことはありますか?
たとえば、あなたの子どもが遅くまで帰ってこなくて、真夜中過ぎにやっと帰ってきたとします。
そこで、つい「何でこんな遅く帰ってくるの?」と子どもに怒ってしまったとします。
このときの怒りの感情を丁寧に振り返ると、あなたの「怒り」の背後には、子どもに対する「心配」の気持ちや、暗い中誰かに襲われているのではないかという「不安」の気持ちがあったのではないでしょうか。
もしかしたら、子どもがあなたに「今日は遅く帰ってくるから」とひとこと言ってくれれば良かったのに、何も言ってくれなかった、という「悲しみ」の気持ちもあったかもしれません。
このように、「怒り」の背後には心配、不安、悲しみ、恐れなど、さまざまな感情があります。これらは「第一次感情」と呼ばれます。
「怒り」は、その「第一次感情」を組み合わせて生まれるとされる「第二次感情」になります。
しかし、ほとんどの場合「第一次感情」は「怒り」の影に隠れてしまい、とっさに自覚するのは難しいのです。
どんなことで怒りを感じるか?ー怒りの6タイプー
「怒り」のタイプは大きく分けると大体6つに分かれます。
1. マナー違反が許せないタイプ
道徳やマナーにこだわりがあるタイプ。歩きスマホや信号無視などの周囲のマナー違反などにイライラするタイプ。
2. 他人の手抜きが許せないタイプ
周囲が中途半端な態度をしていたり、自分と一緒に頑張っていないと強い怒りを感じてしまうタイプ。
3. プライドが傷つくと怒るタイプ
自分の意見が否定されたり、周囲から否定的な評価をされたと感じると怒りが強くなるタイプ。
4. はっきり言い合えないと怒るタイプ
自由な行動やストレートな発言を重視する。自分の言動が制限されたり、はっきり意見を言えない相手などに怒りを感じるタイプ。
5. 「自分ルール絶対」タイプ
人当たりは穏やかだが、自分自身が決めたルールは曲げない性格。「自分ルール」に反することをしなくてはならないときや、周囲が「自分ルール」から外れたことをすると怒りの発端になるタイプ。
6. 自分の境界線を壊されると怒るタイプ
周囲への警戒心が強いタイプ。他人からの干渉に対し怒りやストレスを強く感じる。
自分がどのタイプかを知ることにより、あなたが具体的に何をどうコントロールすれば良いかの指針になります。
まとめ
いかがでしたか?
あなたはどんなところで「怒り」を感じますか?
前編では、「怒り」とひとことで言っても、「怒り」の背後にはさまざまな一次感情があること、「怒り」にもいろいろな怒りのパターンがあり、そのパターンによって対処のしかたが変わってくるのだということをお話ししました。あなたのタイプによって、「怒り」が生じるポイントがちがうということもお伝えしました。
後編では、「怒り」への具体的な対処法や、適切な「怒り方」についてお話ししていきます。