「産後うつになったけど、自分の都合で母乳をやめるなんて赤ちゃんに申し訳ない」
そのような気持ちを抱えながら、母乳をやめてもいいのか迷っていませんか?
妊娠中に母乳のメリットを説明されたからこそ、やめる決断に迷いが出てしまうかもしれません。
この記事では、母乳をやめても大丈夫な理由や、実際にやめたママたちのケースを紹介します。
あなたと赤ちゃんが、より穏やかに過ごせる方法を一緒に考えていきましょう。
産後うつで母乳をやめても大丈夫!
産後うつで母乳をやめるのは、決して悪いことではありません。
厚生労働省でも「母乳育児の継続や終了については、母親の考えを尊重することが重要」とされています。[1]
まずは、母乳をやめることが発育や愛着形成にどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。
発育への影響
母乳をやめても、赤ちゃんの発育に悪影響が出るとは限りません。
母乳とミルクのいずれで育てても、発育には大きな差がないことがわかっています。
実際に、母乳で育った赤ちゃんとミルクで育った赤ちゃんでは、生後6か月の時点で明らかな発育の差は見られていません。[2]
「母乳をやめると発育に悪影響があるのでは」と不安になるかもしれませんが、必ずしもそうではないのです。
愛着への影響
親子の愛着は母乳だけではなく、日々のふれあいの中でも育まれていきます。
たとえば、しあわせホルモンと呼ばれる「オキシトシン」は、次のようなスキンシップでも分泌されます。
- 抱っこやおむつ替えをする
- 赤ちゃんの目を見て話しかける
- 優しくトントンして寝かしつける
大切なのは、ママがリラックスして赤ちゃんと関わることです。
つらさを抱えてムリに母乳を続けるよりも、ママ自身がラクになれる選択をしましょう。
産後うつで母乳をやめるケース
産後うつの治療中「本当に母乳を続けていいのかな」と迷う場面もあるかもしれません。
次のようなケースでは、母乳をやめることを前向きに検討してもよいでしょう。
服薬の影響が心配なとき
産後うつの治療で使われる抗うつ薬の中には、授乳中でも使用できるものが多くあります。
たとえば代表的な抗うつ薬であるSSRIは、母乳中に移行する量がごくわずかで、赤ちゃんへの影響も少ないとされています。[3]
参考記事:産後うつの薬がこわいと感じるあなたへ|効果・副作用・授乳中の影響
ただ「少しでも母乳に移行するなら赤ちゃんに飲ませるのが怖い」と不安になるときは、母乳をやめるのも選択肢のひとつです。
安心して服薬できる環境を整えることが、ママの回復には大切です。
睡眠時間が確保できないとき
2〜3時間おきの授乳で睡眠不足が続くときは、母乳をやめることを考えましょう。
産後うつの治療において、もっとも大切なのは「休息」とされています。[4]
夜間だけでもミルクに切り替えて家族に協力してもらうことで、まとまった睡眠時間を確保しやすくなるでしょう。
また、ミルクは母乳より腹持ちがよいとされており、赤ちゃんが長く眠ってくれることもあります。
ママのこころと身体をしっかり休めるためにも、ムリなく工夫してみましょう。
授乳がストレスになっているとき
授乳がつらい、苦しいと感じるときは、ムリに母乳を続ける必要はありません。
実際に、多くのママたちが次のような理由から母乳育児に不安を感じています。
- 母乳が不足気味:44.3%
- 母乳が苦痛・めんどう:13.2%
- 赤ちゃんが母乳を飲むのを嫌がる:11.3%
参考:産後のメンタルと母乳|授乳とメンタル、ストレスと母乳量の関係
ストレスを抱えながら母乳を続けるよりも、あなたが穏やかな気持ちで赤ちゃんと向き合えることが大切です。
ママたちが母乳をやめる理由
ママたちが母乳をやめる理由は、産後うつや服薬だけではありません。
実際には多くのママたちがそれぞれの事情や生活スタイルの中で、母乳をやめる選択をしています。
例として挙げられるのは、以下のケースです。[5]
- 仕事復帰のタイミングに合わせた
- 虫歯や歯並びへの影響が気になった
- 上の子の送迎で時間の余裕がなくなった
- 授乳のために着たい服が着られなかった
- おっぱいを吸われるのが痛くてつらかった
- 周囲から「もうやめてもいいのでは」と言われた
どの選択にもその人なりの理由があり、どれも間違いではありません。
産後うつで母乳をやめることも、決して悪いことではないのです。
ママがムリなく笑顔でいられることが、赤ちゃんにとってもいちばんの安心につながります。
産後うつで母乳を続ける・やめるに正解はない
母乳を続けるかやめるかに正解はありません。
家庭の事情や体調、価値観によって自分が納得できる選択をしましょう。
罪悪感を持たず「今が私にとっての母乳をやめるタイミングだったんだ」と前向きにとらえてください。
それでも気持ちが揺らいだり誰かに聞いてほしいと感じたりしたときは、famitasuのオンラインカウンセリングにご相談ください。
不安や迷いをひとりで抱えず、私たちと一緒に気持ちをラクにしていきましょう。
参考資料
[1]厚生労働省
授乳・離乳の支援ガイド
https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000496257.pdf
[2]人工栄養児のエネルギーおよび各栄養素の摂取量
https://www.jstage.jst.go.jp/article/milk/63/2/63_63/_pdf/-char/ja
[3][3]日本産婦人科医会
妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル P49
https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2018/03/mentalhealth2907_L.pdf
[4]妊産婦のメンタルヘルスの基礎知識
うつ病(産後うつ病・周産期うつ病)
https://boshikenshu.cfa.go.jp/assets/files/history/r5/tr1_lecture_1.pdf
[5]断乳をめぐる母親の内的経験 ― 断乳時期の決定に関与した要因に着目して
結果と考察
(1)抽出したカテゴリーの説明
断乳時期の決定に関与した要因
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaqp/2/1/2_124/_pdf/-char/ja