「精神疾患でも障害者手帳はもらえるのかな?」
「手帳をもらうと、どんな支援が受けられるの?デメリットはある?」
うつ病や発達障害など、精神疾患の診断を受けたとき、このような心配をする方は少なくありません。
結論から言うと、精神疾患のある方は「精神障害者保健福祉手帳」の申請が可能です。
受けられる支援は、「所得税の控除」や「NHK受信料の減免」「公共交通機関の乗車料金、携帯電話料金の割引」など、日常生活をサポートするさまざまな制度があります。
この記事では、社会保険労務士、社会福祉士として「治療と仕事の両立支援」に取り組む筆者が「精神障害者保健福祉手帳」の対象者、対象疾病、申請手続きの方法、最後にメリットとデメリットについて詳しく解説します。
「精神障害者保健福祉手帳」について知りたい、申請を検討しているという方はぜひご覧ください。
精神障害者保健福祉手帳の対象となる人は?
厚生労働省は「精神障害のため、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方」を精神障害者保健福祉手帳の対象と定義しています。
精神障害者保健福祉手帳の交付人数
「令和4年度衛生行政報告例」によると、精神障害者保健福祉手帳の交付人数は「134万5,468人」となっており、年々増加傾向にあります。
精神障害者保健福祉手帳の等級は1級〜3級まであります。
精神障害者保健福祉手帳の対象になる疾病の種類
精神障害者保健福祉手帳の対象になる疾病は次の通りです。
- 統合失調症
- 気分(感情)障害
- 非定型精神病
- てんかん
- 中毒精神病
- 器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)
- 発達障害
- その他の精神疾患
なお、上記の精神疾患と知的障害の両方を有する場合は、知的障害者が取得する「療育手帳」と「精神障害者保健福祉手帳」の2つを受け取ることができます。
精神障害者保健福祉手帳の申請条件
精神障害者保健福祉手帳を申請するためには「精神障害の初診日から6カ月以上経過していること」が条件になっています。
つまり、初診日から6ヶ月は経過観察の期間になっているため、初診日の時点では申請ができないということです。
精神障害者保健福祉手帳の申請前に、精神障害の通院治療に係る費用を軽減するためには「自立支援医療制度」の利用をご検討ください。
医療費(診察費+薬代)に対する自己負担割合を「3割→1割」に軽減することが可能です。
精神障害者保健福祉手帳の等級
精神障害者保健福祉手帳の等級は、症状が重い順に1級、2級、3級と3段階が定められています。
各等級の基準をまとめました。
「令和4年度衛生行政報告例」によると、各等級ごとの交付人数と割合は以下の通りです
2級が最も多く、約6割を占めています。続いて3級が約3割、1級は1割という割合になっています。
精神障害者保健福祉手帳のメリット
精神障害者保健福祉手帳を取得することで、日常生活、社会生活においてさまざまな支援を受けることができます。
「全国一律で受けることができる支援」と「地域、事業者によって行われている支援」の2つに分けて紹介します。
全国一律で受けることができる支援
3つに分類して紹介します。
公共料金等の割引
- NHK受信料の減免
税金等の控除
- 所得税の控除
- 住民税の控除
- 相続税の控除
- 自動車税、自動車取得税の軽減
就業による自立支援
- 障害者雇用の求人への応募
- 障害者職場適応訓練の実施
地域、事業者によって行われている支援
3つに分類して、一例を紹介します。
公共料金等の割引
- 鉄道、バス、タクシー等の運賃割引
- 携帯電話料金の割引
- 上下水道料金の割引
- 心身障害者医療費助成
- 公共施設の入場料等の割引
手当の支給など
- 福祉手当
- 通所交通費の助成
- 軽自動車税の減免
その他
- 公営住宅への優先的な入居
お住まいの地域によって支援内容は異なります。
ご利用を検討される際は、事前に各市区町村の担当課窓口へご確認ください。
参考:こころの情報サイト(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
東京都の優遇措置は下記をご参照ください。
精神障害者保健福祉手帳のデメリット
精神障害者保健福祉手帳を取得することによるデメリットは特にありません。
手帳の取得は義務ではなく、あくまでも任意によるものです。
一度取得したら一生持ち続けなければならないものではなく、症状が良くなれば手帳を返却をする、または更新を行わないという選択も可能です。
また、自分から会社や友人などに伝えない限り、周囲に知られることはありません。
精神障害者保健福祉手帳の申請方法、有効期間
手帳を取得するためには、市区町村の担当課で申請手続きを行います。
申請後、審査機関(各都道府県、または政令指定都市の精神保健福祉センター)による審査を経て、交付される流れになります。なお、申請から交付までは2カ月程度です。
申請窓口
お住まいの市区町村の担当課窓口に次の書類を提出します。
申請は家族や医療機関が代理で行うこともできますが、その場合には委任状が必要です。
申請に必要な書類
- 障害者手帳申請書
- 診断書(障害者手帳用)
※下記①②の条件を満たす必要があります。
①精神障害に係る初診日から6カ月経過した日以後に作成されたもの
②申請日から3カ月以内に作成されたもの - 証明写真(縦4㎝×横3㎝)
障害者手帳申請書、診断書(障害者手帳用)の様式は市区町村の担当課窓口に置いてあるので、窓口でご相談ください。
有効期限及び更新の手続き
手帳の有効期限は、交付日から2年が経過する日の属する月の末日となっています。
(例)
交付日:2021年12月10日
有効期限:2023年12月31日
更新申請は「有効期限の3カ月前」から行うことができます。
更新申請に必要な書類を準備し、現在交付されている手帳の写しと一緒に市区町村の担当課にご提出してください。
参考:こころの情報サイト(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
まとめ
精神障害者保健福祉手帳を取得することで、経済的な負担を軽減したり、日常生活の支援を受けることができるようになります。
また、症状が安定し「働こう」と思ったときには、障害者雇用の求人へ応募ができ、採用後には症状に合わせた配慮を受けながら無理なく働くことも可能です。
もし、ご自身やご家族が「対象になるかもしれない」と思ったときには、まずはお住まいの市区町村にある担当課までお気軽にお問い合わせください。