「ひとり親家庭への公的な支援って何があるのかな?」
「申請方法は?いくらぐらいもらえるの?」
ひとり親家庭に対して「児童扶養手当制度」という公的な支援制度があるのを知っていますか?
児童扶養手当制度は、ひとり親家庭の子育てにおける経済的不安を軽減することを目的に、申請月の翌月から対象児童が18歳になる年の年度末まで受給することができる子育て支援制度です。
この記事を読むことで「児童扶養手当の対象者の条件」「申請方法」「支給額」「受給後の注意点について」確認をすることができます。
児童扶養手当とは
児童扶養手当は離婚などにより「父または母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について手当を支給し、児童の福祉の増進を図ること」が目的です。
1962年の支給開始時から母子家庭が対象でしたが、2010年からは父子家庭も支給対象に含まれています。
児童扶養手当の令和4年3月末時点の受給者数は「85万4,540人」となっており、母子家庭への支給が受給者全体の「94.6%」を占めています。
- 母:80万8,658人(94.6%)
- 父:4万2,153人(4.9%)
- その他養育者(祖父母など):3,729人(0.5%)
【参考】
児童扶養手当の受給者の要件
児童扶養手当の支給対象者は、以下①〜③すべての条件に該当する養育者です。
日本国内に住所がある「母子家庭」「父子家庭」のほか、父母に代わって児童を養育している人(祖父母など)も支給対象になります。
- 18歳未満(障がいのあるお子様の場合は20歳未満)の児童を監護または養育している
- 一定の理由により、ひとり親に養育されている児童を監護または養育している
- 養育者の所得が一定額未満であること
この3つの要件をひとつずつ解説しましょう。
①支給対象児童の年齢
児童手当の支給対象者は「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(障害児の場合は20歳未満)を監護する母等」です。
つまり、高校を卒業するまでの児童がいる、ひとり親家庭が支給対象になります。
なお、子どもに障害がある場合は、20歳未満までが対象です。
②支給対象児童の要件
児童扶養手当の支給には、対象児童が次のいずれかの状態にあることが要件になります。
離婚だけではなく、一定の理由により、父または母が児童を監護できない状況です。
- 父母が婚姻を解消した児童
- 父または母が死亡した児童
- 父または母が政令の定める程度の障がい状態にある児童
- 父または母の生死が明らかでない児童
- 父または母が1年以上監護義務を放棄している児童
- 父または母が裁判所からDV保護命令を受けた児童
- 父または母が1年以上拘禁されている児童
- 母が婚姻によらないで懐胎した児童
次のような場合には、児童扶養手当は支給されません。
- 対象児童が日本国内に住所を有しない
- 対象児童が児童福祉施設などに入所している
- 対象児童が里親に預けられている
- 対象児童が申請者ではない父または母と生計を同じくしている(父母が障がいによる受給を除く)
- 対象児童が父または母の配偶者(事実婚を含む)に養育されている
③所得制限
児童扶養手当の支給には、養育者の所得が一定額未満である必要があります。
児童扶養手当には「所得制限限度額」が定められており、全額が支給される「全部支給」、一部が減額される「一部支給」、不支給となる「支給停止」に区分されています。
「母(父)と児童1人」の2人世帯ではどうなるのか、所得ベース(給与取得者の場合、給与所得控除後の額)で見てみましょう。
【所得制限限度額】
- 2人世帯(所得ベース)87万円未満→全部支給
- 2人世帯(所得ベース)87万円以上230万円未満→一部支給
- 2人世帯(所得ベース)230万円以上→支給停止
児童扶養手当の申請方法
児童扶養手当の要件がわかったところで、申請方法について解説します。
スムーズな支給につながるよう、申請窓口などを確認し、必要書類は事前に用意しましょう。
児童扶養手当の申請に必要なもの
申請時に必要な書類は以下の通り
- 申請者と児童の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)の原本
- 申請者名義の預金通帳、またはキャッシュカード
- 申請者と対象児童のマイナンバーカード、または個人番号通知カード
- 申請者の本人確認書類(運転免許証、健康保険証など)
- 年金通帳
- 家屋に関する書類の写し
- 養育費に関する書類
- 印鑑(認印)
お住いの市区町村により、申請に必要な書類が異なる場合があるので、申請前に窓口へご確認ください。
申請窓口
申請は最寄りの市区町村窓口(児童福祉課、子育て支援課など)で行います。
原則として、申請をした月の翌月分から支給になります。
申請日前にさかのぼっての支給はされないので、ひとり親になったらすぐに申請窓口へ相談に行きましょう。
申請方法
次に申請方法について
- 「児童扶養手当認定請求書」を記入する
- 「児童扶養手当認定請求書」と上記の必要書類を提出する
- 審査が行われる
- 市区町村長の認定を受ける
- 申請月の翌月から支給が開始される
申請→審査→支給決定までの期間は、おおむね3カ月。支給決定までの所要期間は、市区町村によって違いがありますので申請時にご確認ください。
支給時期
児童扶養手当は年6回、支給月(奇数月)に前月分と前々月分の2か月分がまとめて支給されます。
例えば、3月には「1月分」と「2月分」の2か月分が支給される仕組みです。
原則11日に支払われますが、11日が土曜日、日曜日に当たるときは直前の金曜日の支給になります。
児童扶養手当の支給額と計算方法
児童扶養手当の支給額と計算方法について説明します。
支給額は、養育者の所得額によって決定されます。分岐点となる基準額についても確認しましょう。
児童扶養手当の支給額
令和5年度の支給額は以下の通りです。
1人目は基本月額が支給され、2人目、3人目以降は基本月額に加算額が上乗せされます。
(例)子どもが2人で全部支給の場合
→月額「54,560円」が支給
44,140円(1人目)+10,420円(2人目加算)=54,560円
支給額は毎年同額ではなく「児童扶養手当法」に基づき「自動物価スライド制」が採られています。そのため「物価指数」という基準値の比率に応じて支給額が変わります。
児童扶養手当の支給額の計算方法
児童扶養手当の支給額は、養育者の所得金額を基準に算定されます。
扶養親族などの人数に応じた所得制限限度額(水色の「所得ベース」の額)と養育者の所得額を照らし合わせて「全部支給」「一部支給」「支給停止」のいずれかに決定されます。
また、離婚後にご実家に戻り、児童の祖父母など(扶養義務者)と同居し、生計を同じくする場合は、祖父母など(扶養義務者)の所得額が一定額以上だと全部支給停止になるため注意が必要です。
もし、ご実家で生活をされる場合は、祖父母など(扶養義務者)の収入についても確認した上で、予め市区町村の窓口へのご相談をおすすめします。
【所得制限限度額(令和5年度)】
では、具体的なケースで見ていきましょう。
例えば「母(父)と児童1人」の2人世帯の場合、所得ベースで87万円未満であれば全額支給されるという見方です。
所得ベースの額の計算方法を計算式で表すと、以下のようになります。
【所得ベースの額の計算式】
所得ベースの額=(①年間収入金額ー必要経費+②養育費の8割)ー③8万円(定額控除)ー④諸控除)
養育費をもらっていれば収入にカウントされ、諸控除が多いと収入から減額されます。
つまり、年収が同じ額であっても「全部支給」になる場合と「一部支給」「支給停止」になる場合があるということです。
こちらの計算は複雑ですので、源泉徴収票などの収入額が分かる書類を用意して、市区町村の相談窓口でご相談ください。
【参考】経済的支援(子ども家庭庁)
児童扶養手当受給後の注意点
児童扶養手当の注意点を2つ紹介します。
現況届を毎年提出する必要がある
児童扶養手当を受給するためには、毎年8月に「現況届」を提出する必要があります。
期限までに提出しないと、次の11月分(1月支給)から受給ができなくなりますので、提出は忘れずに。
不正受給に注意
該当児童が18歳に達する日以後の最初の3月31日を経過したときや、手当を受給している父または母が婚姻(事実婚を含む)をしたときには「受給資格喪失届」を提出しなければなりません。
期限までに提出しない場合は不正受給となり、以下のような処罰がありますので、ご注意ください。
- 受給額に相当する金額の全部または一部を返還
- 3年以下の懲役または30万円以下の罰金
まとめ
児童扶養手当について、以下の4点を解説しました。
- 児童扶養手当とは?
- 児童扶養手当の申請方法
- 児童扶養手当の支給額と計算方法
- 児童扶養手当受給後の注意点
これからひとり親になるかもしれないと悩みを抱えている方にとっては、精神面だけでなく経済的な不安も大きなものでしょう。
国や自治体には、今回解説した児童扶養手当のほかにも、生活支援や終了支援など、ひとり親家庭へのさまざまな公的支援があります。
支援制度を活用して少しでも不安を軽減するために、まずは、どのような制度があるかを知ることが大切です。